手に取ってくれた人の気持ちに いつでもそっと寄り添える 長く愛される ノーブルなベア作りをめざしています
【私とテディベア】
手芸が大好きで、常に何かを作っていました。そんな私が本格的なテディベアを作ってみたいと思っていた20年ほど前の話です。作ってみたいけれども、材料をどこで買えばいいのか、道具は何が必要なのか、何から手をつければいいのか、路頭に迷っていたそんな頃、家族の海外赴任が決まりました。赴任先はシンガポール。シンガポールに関する情報を何も持っていなかった私は慌てて本を買い読みあさりました。どんな国なのか、どう生活すればいいのか、そんな私の目に止まったのが、あるではないですか!テディベアの専門店。しかもテディベアのみではなく、生地や道具まで置いてある様子、これは行かねば!と、不安よりも期待に胸を躍らせ、意気揚々と引っ越しました。
そして実際お店に行ってみると、ドイツから輸入された様々な生地、グラスアイ、ジョイント、針、糸、ペン、パターン、テディベアの制作に必要な、引っ越す前の私の生活圏には皆無だったそれらのものが全て揃っていました。そこで私はまずそのお店のオリジナルのパターンで一体作ってみることにしました。たどたどしい会話で質問しながら必要なものを買い揃え、辞書を引きつつ、作り方を解読、分からないところは直接お店に聞きに行ったりもしながら、何とか完成させました。出来た!と、感動と同時に感じたのは、あれ?なんか違う?見本と全然同じじゃない!というトホホなレベルのものでした。そこから、私と、私のオリジナルのテディベア作りの旅が始まりました。
全くの独学で、自作のパターンを起こし、作っては直し、作っては直し、また作って、お家の中に自作のテディベアがどんどんたまっていきました。それでも自分的にはなかなか「可愛い!」と思える子が作れないでいたのですが、そんな時、我が家に遊びに来てくれたお友達親子が、私の作ったテディベアを見て、いたく感動し、「可愛い!」と言ってくれたのです。するとそう言ってくれた彼女に抱っこされた私のベアも、なんとも生き生きと嬉しそうなお顔に見えるではないですか!なんだか急に別のベアのように見えて、これは新鮮な驚きでした。何を可愛いと思うかに正解はなくて、きっとベアと人との相性のようなもので、愛してくれる人の気持ちがベアに魂を吹き込み輝かせる、そういうものなんだなと感じた瞬間でした。(このテディベアは彼女にプレゼントしました)この経験は私にとって今も礎となっているもので、それがきっとテディベアと人との本当の関係だと思っています。
これは余談ですが、我が家には「力丸」という名前のコーギーがいたのですが、彼との生活がきっかけで、私はテディベア手法を用いたコーギー(テディコーギーと呼んでます。笑)を作るようになりました。SNSのコーギーつながりの方々から、それぞれのお宅にいるコーギーを作らせてもらうようにもなったのですが、どの子も"ホントのおうち"に行くと私の手元にいた時とはお顔が違って、緊張感が解けてほっとしたような、嬉しそうな、そういうお顔に変わります。不思議なものです。
人の気持ちはお天気のいい晴れた日ばかりではなく、曇りの時もあれば、時には望まない大雨が降ったりすることもある。だから私は、どんな気持ちの時も手に取ってくれた人の気持ちにそっと寄り添える、長く愛されるノーブルなベア作りをめざしていきたいと思っています。
私とテディベアの旅はまだまだこれからも続きます。誰と出会うのか、どんな出会いがあるのか、楽しみに続けたいと思います。